第1章 鬼龍/攻防戦
ありがたいことに今回のスタジオから自宅のマンションは歩いて20分で行ける。人目はこの際仕方がない。
「汚くて悪りぃな?」
「そんなことないよ? 十分綺麗だよ?」
「そうか?」
「うん」
「茶でも飲むか?」
束間からしたら他の奴の家にも行ったりしてるだろうから、俺んとこみたいなワンルームは珍しいかもしれねぇな。物珍しそうに辺りを見てるし。
「そういや、お前仕事終わり毎回大丈夫なのか?」
「いつもはちゃんと帰れるように頑張ってるよ? 私、感じやすい方だから…」
あ、感じやすい体質なのは自覚済みだったのか。その上でヤってたことは蓮巳の言う決定打のないポイントに繋がるわけか…
「今回は、その…いつも以上に気持ちよすぎたと言うか…」
「それは褒められてるってことでいいんだよな?」
「男優としては、はい…」
嬉しいような申し訳ないような…まあ、仕事は果たせたからいいとするか。
「き、鬼龍くんは…よく女の子連れてくるの?」
「ん? なんでだ?」
「その…私みたいに体力ない子とか…足りない子とか…」
「………」