第1章 金曜日
分かってるよ、美咲の言いたい事。
いつまでも2番目の男にしてごめんなさいって。
こじらせるような事をしてしまってごめんなさいって。
愛せなくてごめんなさいって。
そりゃあ俺は誰かに愛されたいし、今でも愛しているのは美咲だし、出来れば1番になりたいけど。
でももういいんだ。
美咲のいい所、悪い所、みんな知ってる。
大学時代、友達の彼女である美咲に惚れてしまった俺と浮気した事とか。
その後浮気がバレて俺と友達が殴り合いになって、俺は何もかも失って心身共にボロボロになった事とか。
久しぶりに再会した美咲は、それでも想い続けた俺をフって別の男を選んだ事とか。
今の彼氏を1番に愛していると言いながら、結局俺と関係を結んでいる事とか。
まだ1年やそこらの付き合いしかしてない彼氏とやらより、俺の方が美咲の事をいっぱい知ってる。
だから恋人として愛し合ってしまったら、きっと俺達はすれ違う事も分かってるんだ。
こうしてお互い相手が必要な時に会って、飯でも食って、くだらない話や仕事の愚痴なんかを話し合って。
・・・時には体も重ね合わせて。
そんな風に美咲と一生物の友達でいる事が、今の俺の望みなんだ。
「愛してる。」
触れるだけのキスをすると、嬉しそうな笑顔が返って来た。
「あたしも。」
また触れるだけのキスが返って来て、俺も笑顔でそれに答えた。