第1章 金曜日
「いただきまーす!」
「召し上がれ。」
箸を掴むと、まずは美味しそうな肉から手を伸ばした。
「これ何?」
「ハチミツレモンチキンです。」
「おぉ・・・女の子っぽい。」
「でっしょー!」
自慢げに胸を張る美咲が可愛くて、ついでにハチミツレモンチキンもおしゃれな味がした。
「美味しい。」
「よかったー。」
箸を置いて美咲の頭を撫でると、ふにゃんと溶けるような笑顔が返って来た。
一通り頭を撫で終えると、美咲も箸を取って食事に手を伸ばす。
「うん。上手に出来た。」
本人も納得の出来だったようで、俺はスープにも手を伸ばす。
「これは?」
「冷蔵庫の残り野菜を使ったコンソメスープです。サラダはアボカドとトマトを市販のドレッシングで和えただけ。」
「へぇー。アボカドなんて買った事無い。」
「たまーに1個100円を切って売ってるんですよ。そういう時はつい買っちゃいます。」
ふむふむ。感心の相づちを打ってスープを口に運び込む。
冷蔵庫の残り野菜で料理しちゃったり、食材が安い時をしっかりチェックしてたり、これはますます出来る嫁だ。
「男の1人暮らしは野菜が不足しがちでしょ?今日はいーっぱい野菜を食べさせようと思って。」
さらには男の体まで気を遣ってくれてるなんて。
「いいお嫁さんになれるよ。」
「掃除が苦手なんですけどねー。」
「俺も。」
「知ってる。」
笑い合う食卓は、まさに理想の家庭の姿そのものだった。