第1章 金曜日
玄関を開くと、美味しそうな匂いと会いたかった笑顔が出迎えてくれた。
「大貴さん、いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
目が無くなる程笑ってくれるのが嬉しくて、俺もついへらへらと笑ってしまう。
もっと見ていたかったけど、その笑顔はいい音を奏でるフライパンへ行ってしまった。
「もうちょっとで出来ますからねー。」
器用にフライパンを操る様は、エプロンこそしていないけれど若奥様と言った感じで。
俺はその隣で何をするでもなく、ただその様子を眺めていた。
「座って待っててくださいよー。」
「やだー。美咲が料理してるとこ見ていたい。」
「もう。」
照れたような困ったような表情が可愛くて、思わず胸がときめいてしまう。
「ほらっ、さっさと行く!」
照れ隠しの指図に、俺は仕方なく隣の部屋に移動した。
以前来た時より物が増えたような気がする、明るく女の子らしい部屋。
料理の匂いに混じって、美咲の香りが鼻をくすぐった。