第3章 自覚と嫉妬
「ただいまっと…………」
ただいま、なんて言うのはやっぱりまだ慣れない。
だから少し控え目に、呟くように言う。
さすがに寝ているか、もう午前三時だし。
しかし、リビングからは灯りが漏れていた。
まだ起きているのだろうか。
「おう、おかえり」
リビングでは、中也がワインを飲んでいた。
「遅かったな。昨日____いや、一昨日は帰って来なかったし」
「最近凄い書類押し付けられるんだよね」
「余り多かったら俺に回せよ。俺んとこそんなに来ねェから」
紅葉さんにもそんな事言われたな……
なんで私のとこにばっかり、仕事を回してくるんだろう。
「手前ェもワイン、飲むか?」
中也は微かに顔を紅潮させながら問うてくる。
「うん。シャワー浴びてからね」
「おう」
荷物をリビングに放って、髪を解きながら風呂場へ向かう。
今日は土曜日。
特に緊急の用件が入らなければ、やっと二日の休みが入る。
服をネットに入れ、洗濯機に投げ入れ、シャワーを浴びる。
二日間ずっと執務室に籠りきりだったので二日ぶりのシャワーだ。
だから念入りに全身を洗い、風呂場を出る。
大きなジャグジー風呂だが、まだ一度も使ったことは無い。
この土日にでも入ってみようか。
使い古された七分丈のTシャツに短パンを履き、タオルを肩に掛けてリビングへ戻る。