【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第6章 月島軍曹2
はい、回想終わり。
そういうわけで現代に帰り、少々問題は発生していたものの警察沙汰にもならず、無事に元の生活に戻れました。
「てか、これからどうしよう」
わたくし、ベッドでゴロゴロしながらボーッと窓から空を見る。
「まず口座確認してー。スマホ使えるようにしてー。引っ越ししてー」
……面倒くさい。
「やっぱり、ここを出るしかないか」
せっかく元の時代に戻れたのだ。
グズグズしてまた過去に戻ろうもんなら、皆にどれだけ迷惑がかかるか分からない。
「これ以上、先送りには出来ないよね」
私は渋々立ち上がる。
まず広い古民家を周り、あちこち掃除した。
明治時代で鍛えられたから、もう掃除はお手の物だ。
一通り終わると、最初に着物を借りた場所に行く。
元々あった着物の代わりに、鶴見中尉にもらった着物を入れた。
まあモノは良いんだし大丈夫だろう。多分。
そして一階に下り、私は懐からあるものを取り出した。
『慰問袋』
古ダンスのある部屋に行き、タンスを開けて元あった場所に置く。
そして引き出しを閉じ、頭を下げた。
……。
何だろう。私、前にもこれと同じことを、やったことがあるような……。
「そんなワケないか」
疲れてると、脳の錯覚して既視感が起こるというし。
そして私は荷物をまとめたリュックを担いだ。
残したモノも多いけど、後で業者さんに取りに来てもらおう。
家族への連絡とか口座の確認とかスマホの復活とか、もろもろの作業が後回しだが、古民家を離れるのが最優先だと思ったのだ。
もっと早く離れろよって? 実にごもっとも。
でもどこかで、庭の向こうから誰かが来ないか期待してる自分がいたのだ。
この家にずっといたら、私はきっとまた時空を越えてしまう。
そんな気がした。
そして二度と戻れなくなるのだ。
私はガラガラと玄関を閉め、古民家の木戸に鍵をかけた。
「よし、行こう」
色んな人に支えられ、ここまで立ち直ることが出来た。
これからは自分自身の足で、未来を歩いて行こう。
「ありがとう……勇作さん、月島さん、鯉登少尉、他数名」
私は決意し、歩き出した。未来に向かって。
【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
――完
「ん?」
異臭が鼻をついた。