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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第6章 月島軍曹2



 こうして私は勇作さんに励まされ、立ち直ることが出来た。
 その後も手紙を交わした。

 文通カウンセリングの効果なのか、いつの間にか人と話をすることもネットをすることも普通に出来るようになった。

 笑えるようになった。
 
 そして私が弱みをさらけ出したせいか、勇作さんも段々、自分の悩みを書くようになった。

 戦場であまりにも多くの死を見ること、聯隊(れんたい)旗手としての己の役割。
 ――腹違いの兄との関係。
 
 私ごときの人生経験で、対処出来るシロモノではなかった……。
 
 精一杯の返信がどれだけ役に立ったかは謎だが、勇作さんはいつも感謝してくれた。

 誰にも打ち明けられない悩みを打ち明けられる。
 そんな相手が出来たのが嬉しかったのかもしれない。

 そしていつしか手紙の内容も変わっていった。

『祖国に戻ることが叶えば、一目あなたに会いたい』

 その一文を目にしたときは心が震えた。

 このときには、私はもうこの超常現象を完全に受け入れていた。
 会えるのだろうか。だけど私たちの間には長い時間が横たわっている。
 不可能だと頭では分かっていた。

 でも気持ちを抑えられず、自分も同じ思いだと返事をしたためた。

 ……とても、とても喜ばれた。

 だけど無邪気な恋文を交わすそばで、どんどん戦況は過酷になっていているようだった。

『お守りに写真をいただけないでしょうか』

 あるときそう希望され、私は全力で古民家中を漁った。
 そして古い着物が、良い状態で保存されているのを見つけ、お借りすることにした。

 着物をクリーニングに出し着付けを学び、写真屋さんで『きれいだね。お見合いでもすんの? え? 白黒でプリント? 何で?』と首を傾げられつつ撮ってもらう。
 ドキドキしながら慰問袋に入れた。
 返事はすぐ来た。

『写真を見た瞬間、あなたの美しいお姿に目を離すことが出来ず――』

 ……す、すんません。ちょっと加工してましたああ!! マジすんません!!

 それからは本当に会ってもいいように、着物姿で生活してみたり、お茶の入れ方を練習したりした。

 浮かれていたのだ。
 映画の主人公になった気がした。

 だって時を超えて想い合う男女は、必ず最後は結ばれるものなのだから。

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