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【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】

第6章 月島軍曹2



 タンスの中にポツンと置いてあった古い袋に、菓子を入れて放置。

 きっと私、色々あって疲れてたな。絶対。

 もちろん、次の日に慰問袋は普通に捨てるつもりだったのだが。
 だが翌日にタンスを開けたら、慰問袋に変化があった。

「……え? 何で!?」

 慰問袋の中に入れた菓子が無くなっていた。

 私はオカルトを信じないタチなので、まず思ったのは侵入者だ。
 古民家だけあって、防犯面はガバガバだ。

 この古民家に来た経緯が経緯だったので、この頃の私は色んなことに過敏になっていた。
 きっと悪意ある何者かが侵入したのだろうと、ガタガタしながら慰問袋を取り上げてみた。

 すると中には一通のハガキが入っていた。

「キガハ便郵?」

 首を傾げ、逆に読むのだと気づく。かなり古い形式の郵便ハガキだ。
 いたずらにしても、こんな骨董品、よく見つけたな。
 感心しながら手紙を見ると。

 ――よ、読めねえ!!

「き、旧仮名遣い!?」

 歴史的仮名遣いと言うんだっけか? 超読みづらい!!
 えらく達筆な整った字だった。三十分くらい首をひねり、どうにか解読した。
 大体こんな内容だった。

『梢さん。美しい菓子をありがとう。あんな美味しいものは初めて食べました。
 この手紙が梢さんに届く奇跡を願い、書いております』

 ……美しい? 普通のコンビニのお菓子だけど?
 あと奇跡って何すか。あんた、タンスの妖怪じゃないの?

『私は花沢勇作と申します――』

 その後は自己紹介。自分が大日本帝国陸軍の少尉であること、聯隊(れんたい)旗手を拝命していること云々。

 どうやら、このハガキの主は自分が日露戦争の戦場にいると心の底から信じているらしい。
 色々とゾッとした。
 破り捨てようとしたのだが……出来なかった。

『戦地より梢さんのご健康を祈願致します。それでは』

 流ちょうな字で、そう締められていたからだ。

 私を心配してくれた。私を案じてくれていた。

 だから――捨てられなかった。
 私は自分の思いをごまかすように鼻で笑った。

「ま、またずいぶん設定作ってるなあ。近所のじいさんでも忍び込んだとか?」
 
 手紙を指でつまみ、ひっくり返す。周囲をキョロキョロしたけど、古民家はシンとして人の気配はなかった。

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