【尾形】うちの庭が明治の北海道につながってる件【金カム】
第6章 月島軍曹2
さて鶴見中尉の悪趣味なサプライズにより、江渡貝邸は第七師団の皆さんをお迎えすることになった。
なお、その後の数時間を簡潔に書くと、
→江渡貝邸にて江渡貝による『新作ファッションショー』開幕。
→鶴見中尉についていった部下たちが白目・気絶・リバースの三択肢に。
→慣れてる月島軍曹たち、精神汚染された哀れな人々を江渡貝邸の外に避難させる。
→桜きれい。
→何やかんやで花見にしようという流れに。
という意味不明展開があった。
花見には酒がつきもの。異を唱える物はいなかった。
そして精鋭第七師団の皆さんによる買い出しにより、あっという間に酒やつまみがそろい、花見の準備も完了した。
軍人さんたちが、わいわい楽しそうに花見に行くことになった。
今日は上着がいらないくらいの陽気だった。
皆も自然と浮き足立つ。
和気あいあいと桜の花びらの舞う中、酒宴の場所を探しに行く。
なお鯉登少尉は私との再会を非常に喜んでくれた。
そして私が受けた行為に大いに義憤を感じたらしい。
ゴザを抱えて私の横を歩きながら、
「梢!! まだ口がきけないのか、可哀想に!! 月島ぁ、おまえという奴は(以下略)!!」
「…………反省しております」
隣の月島軍曹は、ずーっと鯉登少尉から説教されていた。
「しかし闇の中で月島軍曹相手に三分もたせたのは、見事としか言いようがないな」
後ろでヒゲをなでつけながら鶴見中尉が言う。
第七師団の皆さんも、何人か頷いていているのが見えた。
皆さん、前回会ったときより私を見る目が違う。
月島軍曹は第七師団の中でも、それだけ一目置かれているようだ。
……九割方、運とはいえよく生き残ったな、私も。
なお月島軍曹は、まだ鯉登少尉から説教されている。
針のむしろに座らされたようなお顔だった。
なお江渡貝は一足先から、手を振ってくる。
「鶴見さーん!! こっちです!! この先に僕が時々、肥料を埋めていた桜の大木があるんです! それは見事なんですよ!!」
……それは『まともな』肥料なんだろうな?
だが時間の猶予はない。
「梢。顔色も良いし、馬に乗るのにも問題は無さそうだな。
花見が終わったら私と一緒に旭川に戻るぞ」
鯉登少尉はようやく説教を止め、朗らかな顔で私を見た。