第2章 あんたのことがほっとけない
自分でも何言ってんのかよく分かんないけど。
あの子は、酔っていて次の日には忘れちゃうだろうし。聞いておきたかった。
「政宗さんとかと比べてさ、俺には敬語だし。さん付けてるし」
あー、もうほんと恥ずかしい。
自分で聞いたものの、居たたまれない気持ちになり ごめんと言い残して部屋を出ようとしたその時。
「いえ…私のいた時代で家康さんは、神社も造られる神様の様な人だったから、なんだかとても、緊張してしまって…」
ふにゃふにゃと呂律が回ってなかったけどしっかり聞き取れた。
あぁ…そういうことか。
あの子に避けられてるって思った自分がアホらしい。
安心とともに、もう少し続けてみる。
「じゃあ。"さん"はもういらないし、敬語いらないから。」
彼女がふふっと笑って
「分かりました。家康さん」
「分かった。家康 でしょ?」
「分かった。家康」
そんなやり取りだけなのに、心の鉛がとれて軽くなった様な気がする。
そろそろ、みんなが心配してると思って部屋を出ようと襖に手をかけた。
「おやすみなさい、家康」
するとあの子がふにゃっと笑って自分に向けてきた。
俺は、少し俯き
「おやすみ、玲奈」
パタンと襖が閉まる。
きっと、あの子は今夜のことを明日には忘れるだろうけど。
でも いいや、忘れられたって。
明日、今夜と同じこと言ったらあの子はどんな顔をするのかな… 今夜みたいにふにゃっと笑うのかな。
早く、早く、明日になってほしい。