第9章 練習試合
『テツ君のミスディレクションが効力を失い始めているんです。』
「…どういうことだ?」
分かりやすく説明するために、一花はボールを片手に持ちだす。
『テツ君はミスディレクション、つまり視線誘導を元々の影の薄さにプラスして今のプレイスタイルを創っているんです。』
それでもイマイチよく分からないといった表情をする部員達に、一花はその視線誘導とやらを実践してみせる。
『皆さん、私を見ててください。』
そのままヒョイとボールを投げると部員達の視線は自然とボールへと向かう。
『ほら、もう見てない。』
「「「…あっ。」」」
『テツ君はこれを連続的に行って、コート上からあたかも消えたように見せているんです。』
「なるほど…!それでそろそろって何?」
そこからは黒子が説明する。
「そのミスディレクションですが、使いすぎれば慣れてしまい、その効果はどんどん薄まっていくんです。なので、そろそろミスディレクションが効かなくなるかと…。」
少し申し訳なさそうにしている黒子から告げられた衝撃の事実に、リコは一瞬言葉を失う。
「………。」
次の瞬間黒子は首をメキメキと絞められる。
「そーゆー大事なことは最初に言わんかー!!」
「すいません、聞かれなかったんで…。」
「聞かな、なんもしゃべらんのかおのれはー!!」
『すいません!私も早く言っておけば…!』
「一花ちゃんはいいのよ。」
「えっ。」
なぜか一花には甘いリコ。
その間も黒子を絞めあげ、何か解決策を考える。
しかし、無情にもTO終了の笛が鳴らされた。