第8章 訪問者
「いくら一花っちの言うことでも、それには賛成できないっス。一花っちが直接戦うならまだしも、一花っちは試合には出場できない。」
『そうだね。』
「なら他に誰がいるんスか。火神?だっけ…。一花っちは随分とアイツに入れ込んでるみたいっスけど、あんなレベルじゃ俺らは倒せないっスよ。」
『さぁ、分からないよ。』
「いや、分かるっス。悪い事は言わない、ウチに来てよ。ウチなら一花っちの才能を存分に活かせる。」
『行かない。…それにあんまりナメてると痛い目見るよ?』
黄瀬君の目を見つめる。
「…ハハッ。敵わないっスね。…じゃあもう一個だけ。あの試合の後なんで学校にも来なかったんスか?」
私の病気のことはキセキの世代のみんなは知らない。
テツ君にはバレちゃったけど。
これからも教えるつもりはない。
『それは言えない。』
「…そうっスか。…もし俺らのせいならごめん。」
『それは違うよ?私の事だから気にしないで。』
「そ、なら良かったっス。…そろそろ帰ろっか!」
『そうだね。』
「送ってくっスよ。」
『ありがとう。』
「どういたしまして。」
少し暗くなった帰り道を黄瀬君と歩き出す。
黄瀬君が予想以上に近くで歩くから時々指先同士が掠る。
それが少し恥ずかしくて黄瀬君から距離を取る。
すると、黄瀬君が突然笑い出した。
「ブフッ。一花っち、分かりやす過ぎ。そんなに恥ずかしかったんスか?」
グッと腰を屈め顔を覗き込まれる。
その顔を手で押しのける。
『う、うるさい。なんだっていいでしょ!』
「ハハッ、可愛いっスねー。一花っちは。」
『うるさいよ!』
さっきまでの重い雰囲気とは違い、黄瀬君と歩いているこの時間が楽しい。やっぱり黄瀬君はすごいな。
楽しい時間はあっという間に過ぎ家に着いた。
『あっ、ここ家だから。送ってくれてありがとう。』
「全然いいっスよ。今日は話せて良かった。練習試合、楽しみにしてるっス。」
『こちらこそ、よろしくね。帰り道気をつけてね。』
「うん、じゃあまた。バイバイ。」
『バイバイ。』
軽く手を振り合い家の前で別れる。
今度の練習試合、どこまでやれるか…じゃない。絶対に勝つんだ。
誠凛のバスケで。