第5章 1on1
練習後、私は黒子君と一緒にマジバーガーに来ていた。
シェイクを飲みながら二人で話す。
「まさか一花さんも誠凛に来ていたとは…、驚きました。」
『私も黒子君と同じ学校なんてビックリしたよ。』
「どうしてこの学校を選んだんですか?」
いきなり核心をついてくる質問。
…本当に彼らしい。懐かしいな、この感じ。
『それはね…、あの時、全中の時に誠凛のプレイを見ていいなって思ったの。バスケに対して全力で取り組んで、バスケが大好きっていうのがこっちまで伝わってくるあのバスケが。』
そう。それは彼らが強すぎるが故に、失ってしまった気持ち。
『私が求めてるものはきっとあそこにある。そう思ったの。だから私は誠凛を選んだ。』
「……。」
『もう一度皆んなと笑ってバスケをするために。』
「そうですか…。」
黒子は静かに相槌を打ち、一花の華奢な手をそっと握る。
『く、黒子君?』
「僕も協力させてください。」
『黒子君…。』
「約束します。一花の願いを必ず叶えると。一花さんの心からの笑顔を取り戻すと。」
視界が少し歪む。全中後の彼は酷く弱っていて、彼の手は冷たかった。
だけど、今感じる温かみは何だろう。
…どうやら私の知らない間に逞しくなっていたらしい。
誰よりもバスケに誠実で真剣な彼がバスケをやめると言った時、とても悲しかった。悔しかった。
それを止められなかった自分が憎くて、何度も泣いた。
それでもまた、こうやってバスケに戻って来てくれた。
その事実が堪らなく嬉しかった。
『ありがとう、黒子君…。』
そう伝えると黒子君は優しく微笑み、掴んでいた手を離した。
「あと、一花さん。ひとつお願いがあります。」
『なに?』
「できればでいいんですが、以前のようにテツ君と呼んでくれませんか…?」
彼とはこれから長い道のりを歩んでいくことになるだろう。
『よろしくね、テツ君!』