第1章 「取り戻し」
私は、一歩下がった。
アクチの様子が、いつもと違う事に気づいた。
いつの間にか、私の背中は、壁についていた。
アクチに、追い詰められていた。
そして………右手首を掴まれた。
アクチの吐息が、かかるまで私に、顔を近づかせた。
「………テメェーは、目標(ターゲット)を逃がそうとしたじゃねーか?」
私は、黙った。
どうやら、知られてしまったみたいだ。
私は、アクチに睨みつけて言った。
「………で?それで何?任務は、成功したから、問題ないと思うけど?」
「成功したとしても、テメェーは、失敗させようとしたぜ?悪い子には、躾が必要だ。」
アクチは、そう言って力を入れてきた。
右手首に、痛みが走る。
私は、アクチを押し退けようと………左が出る。
が……………左手首も掴まれる。
私の顔には、苦痛の表情を浮かべた。
その表情を見たアクチは、ニヤ…と笑った。
「テメェーも、そんな表情(かお)を見せるんだな。今まで、無表情だったから、つまんねーって思っていた所だ。」