第5章 【裏】表現/斎宮
甘い。何度か夫婦で会ってるけど、鬼龍くんはあやちゃんの傍をほとんど離れない。離れても宗と見える位置まで離れて話すだけだ。帰る時もいつも肩を抱き寄せているし、宗はいつもそれを見てため息をついて呆れている。
ーーー あれだけ互いに溺愛しているのに、互いに対してだけ鈍感とは…つける薬もないね ーーー
いつだったか見送りながら言った宗の言葉に思わず頷いて同意するくらい、私はあやちゃんと鬼龍くんは相思相愛だと思っている。
「でも、話戻しちゃうけど声は我慢しなくていいと思うよ? 斎宮くんがしなくていいって言ってるんでしょ?」
「そういうわけじゃ…ただ…」
「ただ?」
「初めての時、声出たら…一瞬止まったから……」
「………ゆめちゃん、惚気ご馳走様」
結局、相談は解決しなくて、私はどうしたらいいのかわからないままになってしまった。
「…斎宮くん、多分気にしてるのにフォローしてないんだろうな…」