第4章 【裏】ほんの少し/あんスタ神崎
ーーー 跡継ぎはまだなの? ーーー
ーーー 女が働くだなんて… ーーー
親戚の方からの連絡はいつも跡継ぎや女はどうここうのと言われてばかりだった。
仕事のことは神崎のお義父さまやお義母さま、颯馬くんと話し合った上で続けることになったし、子どもは授かりものだからすぐにくるものじゃない。だから、どうしたらいいのかわからなかった。
何かあれば神崎のお義父さまとお義母さまに迷惑がかかるから連絡はできなかった。セックスも億劫でその気になれなかった。今は颯馬くんは帰りが遅いからセックスをしないでいるけど、颯馬くんと触れ合えないのが寂しかった。
「大丈夫ですか?」
「ふぇ?」
「どこか辛いところありました? お湯が熱かったり、痛かったところありました?」
「…気持ち良いですよ?」
上から心配する声が聞こえてきて、私はわけがわからなかった。
「そうですか? 何かあったら言ってくださいね?」
「は、はい…?」
水瀬さんはそのままヘッドスパを進めて、終わると頭がスッキリしたような気がした。
「じゃあ、髪を乾かしますね」
次は鏡の前に移動されてしまい、水瀬さんは慣れた手つきで丁寧に髪を乾かしてくれた。ドライヤーの風に乗っていい香りがした。これも気持ちいい。
「水瀬さんの手、気持ちいいです…」
「ありがとうございます」
「ほんとに…人にしてもらうのも久しぶりで…」
「なかなか機会がありませんもんね」
「水瀬さんは、お手入れ大変そうですよね」
腰まである髪を鏡越しに見て言うと、水瀬さんは笑って応えてくれた。
「苦とは感じませんし、たまに主人がやってくれる時もあるんですよ」
「え、旦那さんがですか?」
「はい。うちの主人、ヘアメイクも好きみたいで」
「へぇ…」
「私も練習を兼ねて主人の髪のお手入れさせてもらうんでお互い様ですね」
旦那さんのお話をする水瀬さんはとても幸せそうだ。夫婦の時間を過ごせていて、羨ましい…
「いいな…」
「簡単なお手入れならお教えしますよ?」
「あ、いえ…いつもうちの人、自分でお手入れしているので私がやっても下手なだけですよ」
「可愛い奥さんに言っていただけたら旦那様も喜ばれますよ」
「あの…私、可愛くないので…」
「そんなことありませんよ? あ、そうだ!」
「……?」