第3章 【裏】思い思われ/あんスタ鳴上
「はぁ…びっくりした…」
「初対面はびっくりするわよね。でも、根はいい人なのよ?」
「それはわかるよ。だって、水瀬さんがとってもいい人だもん」
「それにゆめちゃんが鬼龍先輩の奥さんと同じ職場だって驚いたわよ?」
「私もだし…あの、嵐…」
「なぁに?」
「いつまでこのまま?」
「そうねぇ…アタシが満足するまで?」
「え!?」
「ふふっ、それはまた後でゆっくりするとして、今はデートを楽しまないとね」
そう言って嵐は身体を離して、変わりに手をしっかり繋いで歩き出した。
私は嵐に手を引かれながら、嵐の横顔を見てるしか出来なかった。その横顔は少し疲れてるような気がした。せめてどこかで休ませてあげれたらいいんだけど…どこも人がいて、アイドルの嵐が心休まれそうなところは見当たらなかった。どうしようかなって思っていたら…
「ゆめちゃん、ここで休憩しない?」
買い物とかもしながら、歩き回って嵐が立ち止まったのは洋菓子屋さんの前だった。テラス席が見えるからイートインがあるのはわかるけど、嵐が休みやすいかと思うと微妙だった。
「え、でも……」
「大丈夫、ここならゆっくり休めるわよ」
そう言われながら入ってみると、そこのイートインのテーブル席は個室のように仕切りがされていた。私たちは店員さんに奥の席に案内された。
「ご注文は後で来ましょうか?」
「そうね…このおすすめケーキセットを2つ、ドリンクはアイスティーでお願いできるかしら?」
「畏まりました」
店員さんに注文を手早く済ませた嵐はようやく帽子とメガネを外した。
「ここのお店ね、司ちゃんのフィアンセが働いてるのよ」
「へ? そうなの?」
「それにここのイートインは個室風になってるって聞いたから、心置き無くデートに来れるって思ってね」
ウィンクしてそう言う嵐を見たら、さっきまで嵐が休めそうなところを探していた私がから回っただけのような気がした。
「ゆめちゃん、さっきから疲れてた? どこか探してたみたいだからこっちに来ちゃったけど」
「いや、そうじゃなくて…」
「…?」
「その…嵐が疲れてるんじゃないかと思って…休めるところ探していたんだけど…どこがいいかわからなくて…」
顔が見れなくて下を向いてたらいきなり顔を上に向けられて、嵐とキスをしていた。抱き締められていた。