第3章 【裏】思い思われ/あんスタ鳴上
「その気持ちだけでも充分だって。なんでも頑張ろうとしすぎなんなよ。俺だってあやに色々してやりてぇのに」
「そんなことないよ? 紅郎くん、いつもお仕事頑張ってるし、お家のことも私が仕事の間にやってくれてるし…」
指折り数えながら旦那さんにしてもらってることを挙げる水瀬さんに流石の旦那さんの頬が赤くなったのがわかった。
あー…水瀬さん、旦那さんに愛されてるのがすごくわかります。こんなに自分がやったことをちゃんと見てくれて、愛してくれてたら旦那冥利につきますよね。本当に。
「ゆめちゃん! ごめんなさい! 待たせちゃって…!」
「あ、嵐…」
「いきなり王様が来て、新曲の譜面渡しに来ちゃって…連絡しようにもタイミングもなくて、本当にごめんなさいね!」
「だ、大丈夫だよ? 嵐、そんなに謝らないで?」
帽子とメガネを被った嵐が珍しく慌てて走ってやって来て、抱き締められると私は嵐を宥めるしか出来なかった。
「誰かと思えば、鳴上か…偶然って怖ぇな」
「あら、鬼龍先輩、お久しぶりじゃないですか」
「おう。嫁さん同士が同僚でな、少し話してた」
「え、鬼龍って…」
嵐が私を抱きしめながら、水瀬さんの旦那さんと話しているのを見て、嵐の呼ぶ名前を聞いて血の気が引いた。Knights同様に人気の高いアイドルユニット、紅月の鬼龍さんが思い浮かんだ。よく見れば、テレビで見る雰囲気とまんま同じだ…
「そうだったんですか? もう、ゆめちゃんったら水臭いわ」
「いや、あの、私も今知って…」
「それじゃあ、俺たちは帰るからそっちも嫁さんと仲良くな」
「鳴上さん、また明日ね」
そう言って水瀬さんは旦那さんと一緒に歩いて行ってしまった。まさか旦那さんが鬼龍さんだったなんて驚きだ。いったいどんな出会いがあって結婚したのか、すごく気になる。