第3章 【裏】思い思われ/あんスタ鳴上
お休み当日、嵐との久しぶりのデートだから仕事以上にオシャレをした。ネイルも昨日仕事終わりに水瀬さんがKnights仕様のデザインでペディキュアをしてくれた。ペディキュアを見せられるサンダルにして、嵐との待ち合わせ場所に向かった。
「少し早く着いちゃったかな」
待ち合わせ場所は駅前の広場で、私は時計の見えるベンチに座って待つことにした。
スマホを見るふりをしながら時計を気にして、嵐を待ったけど時間になっても嵐は来なかった。スマホに連絡が無いことからもしかしたら仕事が長引いているのかもしれない。
「あれ? 鳴上さん?」
「…水瀬さん?」
「偶然だね。旦那さんと待ち合わせ中?」
声をかけてくれたのは嵐ではなく、水瀬さんだった。肩にはたくさんものが入ってるのがわかるトートバッグをかけていた。
「は、はい。水瀬さんは?」
「私は買い物の帰りだよ」
「重くないですか? 少し休んでいった方がいいんじゃ…」
「でも、あと少しで旦那さんも帰ってくるから家にいとかないと」
「大変じゃないですか?」
「私に出来るのってこれくらいしか…」
「あ、水瀬さ…!」
話していたら、後ろから水瀬さんに手を伸ばす人がいて思わず立ち上がろうとしたら…
「またお前はこんなに1人で買い込んで…」
「…紅郎くん?」
「おう…ただいま…」
「おかえりなさい」
「あれ、もしかして旦那さんで…?」
水瀬さんのトートバッグを奪い取ったのは、とても大柄でサングラスをかけた人だった。でも、溜息をつきながら水瀬さんの頭を撫でる手は優しくて、水瀬さんは驚きながらも嬉しそうにしていた。
「おかえりなさい、紅郎くん。紹介するね、こちら同じ職場の鳴上さん」
「いつも嫁さんが世話になってる」
「いえ、こちらこそいつも奥さんにはたくさんお世話になっています!」
「買い物帰りに鳴上さんと会ってね、少しお話してたの」
「同僚と話すのはいいけどよ…買い出しなら自分で持てる範囲で買い物しろよ」
「紅郎くんの好きなものを作って待ってようと思ったんだけど、足りないのがあって…すぐに済むと思ったんだけど、遅かったね」
苦笑いの水瀬さんに旦那さんはまた溜息をついて、頭を撫でていた。