第2章 【裏】満たして/あんスタ守沢
マンションまで送ってもらって、エントランスに入ってエレベーターに乗り込むと走って人が乗り込んできた。
「すみません。無理やり…」
「おかえりなさい、千秋くん」
「ゆめっ、ただいま! それとおかえり!」
「ただいま」
乗り込んできたのは千秋くんだった。話を聞いてたらトレーニングがてらスタジオからここまで走ってきて、久々にお家で私をお出迎えしようとしてくれていたらしい。
「千秋くん、ご飯は?」
「まだだ。ゆめは?」
「私も…あ、お風呂入ってる間に作ろうか?」
「それではゆめの疲れが増えるだろ? そうだなぁ…2人で一緒に作ったら早く食べられるぞ! それに風呂も沸くまでに時間があるしな」
そういうことで、エレベーターから降りて家に帰ってからお風呂のお湯を沸かして、お夕飯の支度を2人で始めた。一緒にキッチンに立つのは久しぶりだなぁ。
「仕事の方はどうだ?」
「うん。今日もオーディション前の子にレッスン頼まれてね…」
お料理しながら、千秋くんとお話してると、やっぱりしばらくお話出来ていなかったことを痛感してしまう。千秋くんがそばに居てくれるのになんだかまだ足りない気がする。何が足りないんだろう? でも、千秋くんを困らせるわけにはいかないし…
「どうしたか?」
「ううん。なんでもないよ」
「ゆめ」
「なに?」
千秋くんに声をかけられて我に戻った私は首を横に振ると、千秋くんは悲しそうな表情で抱き締めてきた。
「ち、千秋くん? どうかしたの? やっぱり疲れちゃった?」
「ゆめ…俺は頼りないか?」
「え、どうして?」
「ゆめのためなら、俺はなんだってする。ゆめには笑顔でいてほしい、辛い時には頼ってほしい、だからそんな悲しそうな顔でなんでもないなんて言わないでくれ」
「……」
そんな悲しい声で言わないで。私も同じなの。千秋くんにはいつも笑って幸せでいてほしい。一緒にどんなことも乗り越えたい…千秋くんに泣いて欲しくない…