第10章 砂と予兆
「……これ以上お前らの面倒事に巻き込まれるのは御免だ、何も知らねェよ」
「巻き込まれる?ハハッ、巻き込むの間違いじゃないのか」
遠回しに敵だろうと疑いをかけるテゾーロに対してクロコダイルは怒るわけでもなくそうだと言うのでもなく、いつにもなく落ち着いて返した
「ないな、──そもそも俺がこの船にいること自体がもう"違う"……!俺はもう十分話してやったハズだ、テゾーロ」
「……!?」
意味がわからないと言いたげなテゾーロの顔を見てクロコダイルは満足したのか小さく笑い、2人に対して背を向けた。
「もう二度と会いたかねェが……今回はその女の思い通りになってやろう……感謝するんだな。」
そう言うと彼は2人に対し一度目を向けニヤリと笑い、徐々に砂と化していった。テゾーロはどういう意味か彼を止めようとする。
「待て、まだ話は終わっていない!」
「ゔぅ……気持ち悪── っ!?」
ようやく煙でむせていたのが落ち着き話を聞いていなかった『名前』が顔を上げると砂と化して消えようとするクロコダイルと、それに対しテゾーロが逃がさんと彼に手を向ける2人が見えた。
しかしテゾーロが何かに気づいたのか彼に向けていた手を下ろしその手に目を向けている。
「な……!?」
「できねェだろうな、俺は正しくここに入ってきてねェ」
「!?」
「ククク……あとはテメェで考えるんだな」
そう言い残しクロコダイルがいた場は一気に砂が弾けたと思いきや姿を消していた。きっとこの屋上から飛び降りたのだろう。彼の能力ならばそれぐらいの距離なら怪我なく飛ぶことができる。
そうして少し強い風が吹きその場に微かに浮いていた砂埃と葉巻の煙が運ばれて消え、クロコダイルがいた形跡は無くなってしまった。
そうやって直ぐに逃げ消えてしまう彼を巨大な船内の中から目星もないのに後を追うのは難しいと判断したテゾーロは諦めてため気を吐く。
とんだ災難にあったと呟きつつ帰ろうとしたがそういえばずっと後ろに『名前』がいたと気づく。
「げっ」
「げっ てなんですか!?怪我人の部下にそんな面倒くさそうな顔しないで下さいよ」
「……その様子なら怪我もないだろう」
「なっ!」
何も知らないくせにと喚く彼女の横を通り過ぎようとした時ふと甘い香りがしたのに気づき振り返った。
「!な、なんですか」
「……その煙草か」