第2章 トリップ
夜歩きと邂逅【side憂希】
「ん…。」
肌に触れる冷たい風。次第に意識が覚醒していく。まだ硬直している体を無理矢理起こし、立ち上がる。そしてそのまま視線を下にスライドすると、まだ寝こけている相方。
「…おーい、起きろー。」
頬をペチペチと叩いても起きないのでこれは置いていくことにして、周りを見回す。ここはどこかの路地裏のようだ。
「ま、ひとまずこの辺ふらふらして地理を把握しますか。」
ぐーっと伸びをして歩き出す。どうやらポケットに入ったガラケーに貰った家の住所はかかれているようだし、おそらく簡単に合流できる。こいつはこのまま路地裏に転がっていたら面倒に巻き込まれるかもしれないが、意識さえあれば大抵のことをどうにかできるスペックの持ち主だから問題ない。そう考えて私は夜の街を歩き出した。
「うん、だいたい地理は把握できたかな〜っと。…ん?」
後方100mに反応あり。どうやら神隠しに貰った察知機能はきっちり作動しているようだ。
「えーっと、これは、折原臨也…?」
後方から折原臨也接近中。私は面白い悪戯を思いつき、いつも持ち歩いているメモ帳とシャープペンシルを取り出した。それからそのメモ帳のページを破り取り、簡単な文章を書き付け紙飛行機を折って飛ばす。
(これを見たら貴方はどんな顔をするのかな?素敵で無敵な情報屋さん___________________________。)
そして私はそのまま身を翻し、折原臨也が紙飛行機に触れるのを確認してその場を立ち去った。