第2章 トリップ
夜歩きと邂逅【side新羅】
新羅は静雄が運んできた少年を見て好奇心に目を輝かせた。一見するとただ長く伸ばした艶やかな黒髪の美しい整った顔立ちの少年だが、新羅は少年の診察を進めるにつれあからさまになる少年の異様さに純粋に驚愕し興味を抱いていた。この少年が何故新羅の興味を引いたのかというと_____
彼の頭の傷口は新羅のマンションに運び込まれた時点でもうほとんどふさがっていたからだ。
とはいえ頭に付着したまだ液体状の血液はこの少年が怪我をしてからさほど時間が経っていないことを示していた(当然血糊などでもなかった)。そしてそのことに気がついた新羅は静雄を早々に追い返し、少年の目がさめるのを待っていた。
…待っていた、のだが。
「何も言わない人間の顔覗き込んでるのって飽きるよね。」
新羅の手にはいつの間にか少年のカーディガンのポケットに入っていたであろう携帯電話が握られていた。