第3章 不思議な人✳︎白澤✳︎
「初恋は実らない。」
だなんて。
誰がこんなことを言ったのだろう?
いや、まぁ確かに全くもってその通りなんだけど
「……鬼灯様。」
大好きな思い人を頭に浮かべながら帰路に着く。
少しでもあの人に近づきたくて
私は獄卒になった。
死ぬ気で働いて。
彼に見てもらいたくて
やっとの思いで手に入れた閻魔大王第2補佐官という役職。
彼の近くで仕事をすることが、すごく。すごく幸せだった。
だけど…
その役職ももう意味がない。
だって…………
彼はお香さんと付き合ってるんだもの。
信じたくない。でも、この目で見てしまった
鬼灯様とお香さんが手を繋いでデパート内を歩いている姿を。
とても幸せそうな2人の姿が
目に焼き付いて離れなかった。
「いやな休日だなぁ…」
明日からどんな顔して会えばいいのか
彼の顔を見ただけで泣いてしまいそうだ
目頭に熱いものが込み上げてくる
ここで泣いちゃダメだ…!
早く家に帰ろうと下を向き、早足で歩いてると
「「いたっ!?」」
…誰かとぶつかってしまった。
「ごめんね?大丈夫?」
私も謝らないと、と顔を声の主の方へ向ける
・・・・・・が、私の口からでたのは謝罪の言葉ではなかった。
「・・・鬼灯・・・・・・様?」