第1章 ここ……どこ
……なんて?
振り返ってぱちぱちと瞬きをする。
「制服着てるってこたァ表の人間なんだろうけど。ここ、戦えねぇやつが1人で居たらすぐ死ぬぜ?」
「死……って」
「ここにゃわんさか出るからな」
出るって……何が
その疑問が伝わったのか、男はニヤリと笑う。
「ヴィラン。俺みたいな……な」
「ッぐ」
カバンの落ちる音
僅かな浮遊感
背中の痛み
気がつくと、視界には真夜中の空と継ぎ接ぎの顔。
押し倒されたと気づくも、それは女の子が“きゃっ”てなるようなそんな甘いものじゃない。
首を片手で抑えられて息が苦しい。
でも、それより私の頭を支配しているもの。
ヴィランって……
いやまさか、まさか…
ならこの人は
「俺がその気なら、お前くらい一瞬で灰にできる」
「……っ」
そう言いきった彼は直ぐに上から退いてくれた。
「俺に拾われろ」
有無を言わせない言葉に、上半身を起こしながら見上げる。
そしてさっき気になったことを聞いた。
聞いてしまった。
「その……今言うのもなんですけど……お名前伺っても、いいですか?」
「……今は荼毘で通してる」
当たって欲しくなかった予想に目眩がした。