第28章 熱情の三日月(*)
気付けば、私は三日月の腕の中に居た。
優しく、温かい彼の胸に顔が埋まる。
すると、私の首筋へと顔を埋め、何かを確かめるかの様に首筋に軽く口付ける。
何処か苦し気にも聞こえる吐息が首筋に掛かり、擽ったさに身を捩る。
三日月「主…お主に何かあったのでは、と…肝を冷やしたぞ」
主「ごめんなさ…い」
絞り出した様な彼の掠れ声は、まるで泣き声にも聞こえた。
三日月「大事無くて、本当に良かった…っ」
抱き締められると、この温かさにずっと包まれていたくなってしまう。
不意に重心が傾き、三日月に組み敷かれてしまう。
え…何、ちょっと待って?
急展開ピンチ!誰か助けて、SOS!!
主「ちょ…三日月?」
三日月「暫しで良い…主の温もりで、この不安を鎮めてくれ…」
首筋から鎖骨、胸元へと軽く触れるだけの口付けを落としていく。
口付けられる水音が狭い鍛刀部屋に響き渡り、何処か厭らしく耳に届く。
擽ったさと不安、苦しい程速くなる鼓動が自らの思考を支配する。
主「や……んっ」
三日月「主…俺が恐ろしいか?それともやはり、不浄だと…嫌うか?」
怖い…うん、凄く怖い。
だってこんな事、した事無い。
不浄?…ううん、違う。
三日月も他の皆も穢れてなんていない。
だって、今私に触れているこの手は…こんなにも優しい。
私を心配してくれる彼の心は、こんなにも温かい。
その想いを伝えるべく、口付ける事を止め、眉根を寄せて苦し気に顔を顰める三日月と自ら唇を重ねた。