第63章 敵と家族と境界線
空が雲を、この本丸迄をも茜色に染め上げていくのを私はじっと見つめていた。
膝の上で幸せそうに眠る御手杵の頭を撫で、ただこの本丸の景色を窓から見下ろしていた。
主「……お腹空いた」
そう言えばお昼抜きだったっけ。
呑気に私が呟くと、皆が集まる際に…又は問題や緊急時に使うと取り決めた全振りの刀紋を印した鈴が鳴り響いた。
御手杵「……敵襲か?」
主「うぇ!?いや…え…っと、わかんない」
今まで眠っていた筈の彼は、鈴の音を耳にした途端起き上がり目を細め警戒した様に静かに呟く。
嘘、寝てたんじゃないの!?
いや、この人達は戦場を駆けて来たんだ。これが普通なんだ、命をかけているんだから…。
鶯丸「主、無事か!?」
唐突に襖が勢い良く開かれ、鶯丸が血相を変えて入ってきた。
何なにナニ!?あのお茶ばっかり飲んでて、のんびりはんなりした鶯丸が慌てるなんて…本当に一体何があったの!?
御手杵「敵襲か?」
鶯丸「いや、状況は分からん。鈴の音が聞こえてきて、先ずは主の安否確認をと…な」
主「行ってみよう。もしかしたら何か皆に集まってくれっていう合図かも知れないし、ね?」