第62章 夢と現実
ぼそっと言った言葉だった。
出来ればこんな誘う様な言葉、聞こえて欲しくは無かったから…。
すると、御手杵は目を輝かせしゃがみ込むと私の肩に両手を置いた。
御手杵「本当か!?」
主「ぅ…あ……はい」
目の前の、まるで新しいオモチャを貰って喜ぶ子供の様な目をされては…今更否定なんて出来なかった。
しかし、御手杵の行動は意外なものだった。
私の膝に頭を置いて寝転び、耳掻き棒を差し出して来た。
御手杵「じゃあ、耳掻きしてくれ」
主「ふぇ!?ぁ…うん、良いよ」
うわ-…私どんだけ耐性出来ちゃってんの!?勝手に誤解して恥ずかしい!
何はともあれ、御手杵に渡された耳掻き棒で丁寧に耳垢を掻き出していく。
気持ち良さそうに瞼を閉じる彼が何よりも愛しく思え、この時間が終わらなければ良いのに…とさえ思ってしまう。
しかし、両耳の掃除を終えると彼は起き上がり伸びをした。
御手杵「うぅ…んっと!よし、すっきりした。それじゃあ今度は…子守唄なんて歌ってくれねぇか?」
主「子守唄?」
再び私の膝に頭を乗せ横になれば、にっと人懐っこい笑みを浮かべる。
私が不思議そうに首を傾けると、御手杵は私の頬に優しく触れてきた。
御手杵「アンタの声を聞いて寝たい」