第60章 嫉妬と初恋(*)
何分位そうしていたんだろう。もう、このままどうなっても構わない…なんて感情が湧いてしまった。その瞬間、唇が離れた。
主「はっ…ハァッ……た、たろ…ぉ?」
太郎「これは嫉妬…なのでしょうか?」
主「へ…?」
胸を押さえ、自分が分からないとばかりに眉根を寄せる太郎太刀の首に腕を回し抱き締めた。
主「私、太郎に嫉妬して貰える程…魅力も無いし良い子でもな……んっ!?」
太郎「ん…っ」
言い終わる前に、太郎太刀に再び唇を塞がれてしまう。
酸欠になっていくと、脳が太郎太刀の事以外を考える事を許さない。
自らの舌を太郎太刀の舌と絡ませる様に動かし、喉奥に流れ込む唾液を飲み下す。
すると、ゆっくりと唇が離れた。
太郎「弟が…次郎太刀が主様に触れているのが、とても腹立たしくて」
主「…?」
太郎「私は主様に恋慕…しているのだと…思います」
恋慕…恋い慕う事。
はっきりとしない予測を口にする様な太郎太刀の口調は、一体どうして?
主「私は此処に居る皆が好き。好きで好きで仕方無いくらい、愛してる。太郎太刀の事、私は胸を張って好きだって言える…」
太郎「っ…貴方を見ていると、その瞳と目が合うだけで胸が苦しくなる。その声を聞くだけで心が震えます、狂おしい程に貴方を目で追ってしまう…私のこの想い、受け止めて頂けますか…?」