第60章 嫉妬と初恋(*)
太郎太刀に抱かれ、連れられるままにやって来たのは初めて見る部屋。
他の子達の部屋より大きな布団がきちんと畳まれ、二組置いてあった。
此処は太郎太刀と次郎太刀の部屋…だろうか?
太郎太刀はというと、いつもと少し様子がおかしい。
此処に来る迄の間も、足取りが少しばかり乱暴だった。
主「あ…の……有り難う、太郎」
太郎「妬けますね…」
私を畳んであった一組の布団に凭れさせる様に下ろし、覆い被さる様に組み敷く。
間近に見える太郎太刀の顔に、いつかの夜の太郎太刀が言った言葉を思い出す。
主「太郎…?」
太郎「…っ」
どうしたのだろうか?
助けてくれた筈の太郎太刀の顔が何処か悲しそうで、思わず彼の頬に手を伸ばす。
すると、何も言わず強引に唇を塞がれてしまった。
いつも冷静で優しく表情をあまり変えない彼からは想像も出来ない、情熱的な口付け。
主「んっ…ふ…」
太郎「は…っ……ん」
段々と苦しくなる呼吸とは裏腹に、この熱を感じていたいと身体が勝手に反応する。
互いの唾液が混ざり合い、熱を交え沸々と沸く湯の様に熱くなって喉の奥に流れ込む。
不意に頬に優しく触れてくれるその手は、紛れもないいつもの彼の手だ。
けれど激しく止まぬ豪雨の様な口付けは、止まる事を知らぬ様に私の唇を塞いだまま離してはくれなかった。