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私の本丸

第57章 亀甲と本丸




亀甲「そうだね。乱藤四郎は骸という男に操られ、家族を襲った。幾ら謝ったとしても許されないだろうね」

乱「…!!」

主「そ、それは…っ!」


涙を流し、絶望という表現が一番相応しい表情を浮かべ立ち竦む乱。
すると突然、あの険しかった亀甲の表情が優しい笑顔に変わった。


亀甲「けれどそれは骸が所持した刀剣、乱藤四郎。此処に居る君とは別人さ、こんなに温かい涙を流せる乱藤四郎は…きっとご主人様の自慢の一振りだろうからね」


亀甲は乱の涙を人差し指の背で掬い上げ、和らげた笑みを真っ直ぐに向ける。
しかし、乱は彼の変化について行けずに眉を下げたままに目を丸くした。


乱「…え?」

亀甲「あの男は死んだんだ、だからあの男の“モノ”だった乱藤四郎も死んだ。此処に居る君は、ご主人様が大切だと愛する家族…悪い子な訳が無いよ」

主「……亀甲」


微笑みながら告げる亀甲の言葉に、乱は崩れ落ちる様に座り込み…泣きじゃくった。
歩み寄って来た薬研が乱の背を優しく撫で擦る。止め様にも涙は止まる事を知らぬ様に溢れ出て、薬研は仕方無く乱を部屋へと連れて行った。

だが、これで乱も本当の意味で自由だろう。
人が一人死んだという事に、やはり思う所はある。しかし、取り敢えずは…この子達が無事に笑顔に戻れるならばホッとしても良いのかもと、胸を撫で下ろした。


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