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私の本丸

第56章 月輪の神秘(*)




長谷部は深々と頭を下げ、部屋を出て行った。
一瞬見えた、目尻で光ったあれは…涙だろうか?
振り払う様に首を振り、持って来てくれた食事を平らげた。

それからは無心で報告書作成の作業に没頭した。
漸く終わり、政府へと送信した所で窓の外を見上げる。
もう少しで月が完全に隠れ、月の輪が顔を出そうとしていた。
綺麗だな…。


主「亀甲にも、見せてあげたいな…」


“ 会いたいよ ”

私の呟きが、不意に誰かの声と重なった様な気がした。
すると、完全に月が隠れて出来た月の輪が光り始める。
その光が私の居る審神者部屋へ窓を抜け、真っ直ぐに私の前へと伸びて来た。
途端、部屋中に眩い光が広がる。


主「ま…ぶしっ…!」


目を閉じた、正確に言うと目を開けていられない程の眩い光に目を閉じざるを得なくなってしまった。


?「………此処は…?」


突如、鼓膜を擽った声に耳を疑った。
今此処に居る筈の無い人の声が、部屋に優しく響く。


主「……きっ…こう?」

亀甲「…ご主人様…かい?」


瞼を押し上げて見れば、あの夢現の世界じゃない…この本丸に私の目の前に、彼は居た。
亀甲と約束をしてから、私は泣かなかった。
でも、嬉しさと安心から溢れ出す涙を…私は止める事が出来なかった。


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