第55章 夢現
彼の胸元に顔を埋め放った私の言葉に、亀甲は肩を震わせた。
顔が見たい…二週間も離れてしまった彼の顔を。
再び顔を上げ、彼の目を真っ直ぐに見た。
主「亀甲、会いたかった…」
背伸びをして、私は自ら彼の唇に口付けた。
亀甲「…ん」
私の口付けに、驚いた様子も無く受け入れてくれる。
うっすらと瞼を開くと、同時に亀甲の瞼も開かれた。
目が合い恥ずかしさが募り、唇を離そうとした。しかし抱き締める腕に力が込められ、次は亀甲からの深く甘い口付け。
主「んぅ…っ…」
亀甲「…っ……はぁ」
唇はすぐに離れた。
何よりも主を気遣う彼らしい、と思った。
主「好き……亀甲が居ないと苦しいの。亀甲は私の最初の家族なの、居なくなっちゃ嫌だよ!」
亀甲「僕が本丸に帰ったら、ご主人様は僕を愛してくれるかい?」
そんなの、とっくに愛してる!
…でも。
主「帰って来てくれたら…愛してあげる」
拗ねた様に顔を背け、ちらりと亀甲を横目で見る。
亀甲「では、僕も尽力しなくては!僕が居なくてご主人様が泣くなら、僕はどんな事をしてもその涙を止めてみせるよ」
そう言って、亀甲は笑った。
それはあの時の悲しげな笑みでは無い、自信に満ち溢れた…強い笑み。
ホッとした瞬間、私の体は光に包まれた。
もう…話せなくなるの?もっと話していたい、でも…自分の体は段々と消えていく。