第55章 夢現
~ * 夢現 * ~
主「いったぁぁ…あんのクソジジイ、思いっきりやったなぁっ!?」
項の痛みが、此れは夢で無いと物語っていた。
しかし、辺りを見れば真っ白で何もない変わった場所。
一体此処は何処だろう?
亀甲「な……ご…主人…様…なの…かい?」
突然耳に届いた声は、私が会いたくて仕方無かった…あの優しい声。
溢れ出る涙で、前が見えなくなる。
振り返ると、其処には待ち望んだ彼の姿があった。
主「亀甲!!」
亀甲「ご主人様!!」
三日月の手刀の影響か、立ち上がると足元がふらついて倒れかけてしまった。
しかし、すかさず駆け寄る亀甲の手によって抱き留められた。
主「…本丸を離れて良いなんて、言ってない!」
抱き留めてくれた彼の胸元の服をぎゅっと握り、私は可愛さの欠片もない第一声を放った。
亀甲「すまない…」
主「亀甲が、一人だけ犠牲になって良いんだなんて…言ってないよぉっ!」
亀甲「……っ」
彼の顔を見上げ泣き叫ぶ様に伝える私を、亀甲はぎゅっと抱き締めてくれた。
彼はどんな時も優しく見守り、何より私の事を考えて行動する。
それは嬉しくもあり、同時に自己嫌悪する程辛くもあった。
主「私から…離れて行かないで…っ」