第54章 欠けた本丸
~ * 亀甲貞宗 目線 * ~
此処は一体、何処なんだろうか…。
目を開くと辺りは真っ白で、何も無い。
ただ水平線が広がる様な、そんな虚無の世界。
不意に、足元に転がる男が僕を睨み付ける。
骸「クソ刀が…やってくれたな」
そうだ、僕はこの男に神隠しをした。
彼女に…ご主人様に触れ様とするこの男の姿を見た瞬間、思わず駆け出していた。
まだ力も付けていない付喪神がこんな所業、成し得てもきっと戻れない。
それを…理解しての行動だった。
亀甲「生憎、僕のご主人様様は君なんかが触れて良いお方じゃ無いんだよ」
見れば腕の無くなった肩から血を流し続けている、誰かが刎ねたのだろう。
肩で息をし、血の気の無い顔色から察するに…失血する寸前の様に思えた。
骸「あんな…チンケな審神者に…何故、お前らみたいな…強い刀剣が…集う?」
苦し紛れに、途切れ途切れに問い掛けてくる。
亀甲「君が弱小であるが故に、刀剣が集わず成長もしなかった…と、僕は考えるが?」
骸「フッ…言ってくれる…」
この男が自嘲する様な笑みを見せても、僕の心は動かない。
此処はいわば僕の世界、この男の言霊の力に操られる事もない。
僕はその穢らわしく醜い存在を、ただ冷ややかな目で見下ろした。