第54章 欠けた本丸
襖を開けてみると、歪な形のおむすびが二つ。そして、湯呑みに注がれた温かいお茶が置いてあった。
主「優しいなぁ…っ。私、皆を危険に晒して…亀甲まで…」
涙は止まらない、寧ろさっきより増した気さえする。
右側のおむすびを手に取り、一口食べる。
塩味のおむすびの中に、柿が入っていた…小夜だろうか?決して美味しいとは言えない、でも…小夜の優しさと想いがこのおむすびを極上の味に変えていた。
食べ終えて左側のおむすびを手に取り、一口食べる。
甘い砂糖で握られたおむすびの中に、白葡萄が入っていた…こっちが蛍丸?何だかデザートの様で、疲れた体がすっと癒される様な気がした。
主「ご馳走様でした、皆ありがとう」
そう口にしながら書いたメモを、盆に添えて部屋の外に出した。
気怠い体を横にすると、すぐに睡魔がやって来た。
泣き疲れた所為もあるのだろう、静かに目を閉じた。