第54章 欠けた本丸
主「き……亀甲…?」
その名を呼んでも返事は無い。
辺りを見回しても、その姿は無かった。
私を初めて主と認めてくれて、真っ直ぐだった彼。
主「あれ…何で?亀甲は、すぐに帰って来る筈なのに…どうして…っ」
何が起きたのかも分からないまま、私の頬には涙が伝う。まるで、出来事の全てを把握しているかの様に流れ続けた。
合流した左文字兄弟と新たに加わった刀剣男士、小烏丸に泣きながら謝り続ける乱。
悪いのは全部あの男…いいや、私もだ。
力も無いくせに喧嘩を売って、負けたんだ。
亀甲は私を助けてくれたんだ…自らを犠牲にして。
主「うっ…うわああああああああっ…ぁぁぁあっ!!」
私は大声を上げて泣いた。
皆が集まってくる中、泣いて泣いて泣きまくった。
漸く刀剣男士達が集まり、小烏丸が皆に説明をしていた。
泣き続けていた私の背に手を添えて、長谷部が審神者部屋まで連れていってくれた。
昼になっても部屋から出る気になれず、ただ溢れてくる涙を袖で拭い続けていた。
すると、不意に襖の向こうから声を掛けられた。
愛染「主さん…ちょっとでも良いから食ってくれな?蛍丸と小夜が作ったんだ」
薬研「大将、アンタが身体を壊しちまったら元も子もない。二人の気持ちもこもってるんだ、食ってやってくれ」
そう言って審神者部屋を開ける事無く、盆を部屋の前に置いて立ち去る二人。
それが二人の優しさなのだと、心が温かくなった。