第53章 敵襲
不意に乱が顔を上げた、その瞳は光を失っていた。
そう、出逢った時のあの瞳の様に。
乱「ぅ…あ…逃げ…て…っ……うああああああああああああああっ!!!」
突如、光を無くしたアクアマリンの虹彩が血の様な赤に染まる。
獣の雄叫びの様な叫び声を上げ、小夜に斬り掛かった。
ふと見れば、乱の目尻からは血の様な赤い涙が流れていた。
小夜「……っ!!」
受け止める小夜だったが、乱の物とは思えぬ怪力に圧され苦戦していた。
主「小夜ちゃん!乱ちゃん!!」
宗三「兄様、お小夜を頼みます!!」
そう言って刀を抜くと、宗三は空いた手で私の手を引き走り出した。
江雪「乱、お手合わせ頂きます…っ!」
去り際、甲高い金属音が鳴り響く。
嫌だ、どうして家族内で刀を抜いて戦っているの…。
こんなの嫌だよ!!
?「ならば、本丸を明け渡せ」
宗三「…っ!」
曲がり角を曲がった瞬間、現れたのはあの万屋で見たあの男。
にたりと厭らしく笑う笑みが、その存在をより不気味に引き立てていた。
主「骸…」
骸「ほう、名を知ったか。だが、お前の様な弱小の審神者に言霊の能力を扱えるとは思えんな」
嘲る様な笑い声を漏らす、目の前の男。
その存在感と力の差に足が竦み、足が震え出す。
ふと宗三へと視線を移すと、あの時の三人の様に苦し気に床に足をついていた。