第52章 甦る記憶
皆の明るい笑顔と優しい眼差しに包まれて、またも目頭が熱くなってきてしまう。
駄目だ。直ぐに泣いている様じゃ、あの男に負けてしまう。
支えてくれる家族が居るんだ。私も強くならなきゃ…強く、なりたい!
密かに作っていた物があった、皆の刀紋を印した鈴だ。
私が神力を込め、この本丸内だったら何処に居ても鈴の音が皆の耳に届く様に細工を施した。
逆に盲点になるだろう、と…広間の隅に置かれた座布団の山に埋もれる様に隠してあった。
立ち上がり、鈴と鈴飾りを取り出して皆に向けて差し出す。
主「ありがとう、鶴ちゃん…目が覚めたよ。これ…皆にプレゼント。この鈴飾りに結んで、皆が集まりやすい場所に掛けて欲しいの」
長谷部「これは…っ」
鶯丸「…俺達の刀紋か?」
主「長谷部…この鈴は本丸を出ない限り、何処に居ても皆の耳に届く。だから、これの使い道は…長谷部に一任します」
思わず敬語になってしまう。
きっと、夕方の件もあり…私自身、無意識に恐怖やら緊張といった感情を見せない様にしているんだろう。
長谷部「…主命、承りました」
真剣な面持ちで一つ頷いて立ち上がり、全ての鈴と鈴飾りを手に広間を出て行く長谷部。
主「よし…じゃあ、みんなご飯食べよう!」
御付きの狐「そうで御座いますね。皆様、腹が減っては戦は出来ぬ。主様のお声掛けのもと、お食事に致しましょう!」
皆の顔を一度見回し、一つ頷くと私は手を合わせた。