第52章 甦る記憶
主「…じゃあ、いただきます!」
皆「いただきます!」
そして、少し緊張感の張り詰めた中での食事となった。
食事を終えた私は、左文字兄弟の部屋に居た。
理由は簡単、夜目の利く小夜が居る事。
実力が高いと称される江雪が居る事。
そして、洞察力の優れた宗三が居るという事だ。
宗三「全く貴女は、問題事ばかり引き連れて来て…」
小夜「兄様、今日政府に行ってた主様を心配し過ぎて…見張り中もずっとそわそわしてた」
江雪「素直になる事も、必要ですよ…」
宗三の言葉にしゅんとしてしまう私に…小夜がわざと聞こえる様に呟き、江雪が宗三の肩をポンと叩く。
宗三「………無事で、何よりです」
途端、ふいと顔を背けて小さな声で言う宗三。
この小さな室内で此処まで静かな空間、聞こえない筈は無かった。
冷たくも聞こえる声音だったが、今なら分かる…彼は本気で私を心配してくれていたんだって。
主「…っ…心配掛けて…ごめんなさい…っ」
何だか親を心配させ、泣かせてしまった様な気になってしまう。
ふと見れば、宗三の頬が濡れているのが見えた。
小夜「江雪兄様、厠に行きたい」
江雪「…では、私がお小夜を厠に連れて行きます。宗三…主様を頼みます」
二人の精一杯の気遣いだったんだろう。
人目があると素直になれない、この目の前の優しい兄弟を想っての…。