第51章 恋文
主「それって、私の事だって…自惚れても良いのかな?」
そう、静かに問い掛けた。
三日月「無論。俺は、お主しか見ておらぬ。こんなにも人の子を愛す事など…無いと思っていた」
そう言って、目を合わせるべく三日月から少し身体を離した。そして彼と目が合った瞬間、私は息を呑んだ。
瞳の中でいつも輝いている三日月が、溜まった涙で水面に映り込む月の様に揺らいでいた。
主「好き…私も大好きだよっ。ねぇ…三日月の時代では、愛をどう囁いたの?」
三日月「三日月の灯りに燃ゆる我が想ひ 知ってか知らいでか むだいす人の恋しき…っ」
主「…んっ」
ふと、何か和歌の様な言葉を紡いでは軽く触れるだけの口付けを落とす三日月。
えっと…ドウイウイミデスカ?
主「…?」
三日月「…俺が打たれた時代では、和歌で愛を囁いた」
主「意味が…分からないのですが…?」
すると、いつの間にか涙の引いた三日月の瞳が優しく弧を描く。
あ…いつも通りの目だ。
優しい、何もかもを許してくれそうな穏やかな瞳。
三日月「俺は主を好いている…そう、言っただけだ」
それにしては長かった様な…?
あー…古典、もっとちゃんと勉強しとくんだった!!
三日月「少しは落ち着いた様だな。ならば、皆に顔を見せに行ってやると良い」
主「えっと…うん。ありがとう、三日月!あ…それと、大好きだよ!」
私は三日月の頬にそっと口付けて、皆の元に向かった。