第51章 恋文
包丁「なっ!主を一人占めするなんて、狡いじゃないかっ!…っ!?」
ぷんすかと怒りを露にする包丁だったが、三日月の顔を見て息を呑んだ。
三日月が眉を下げて不安そうな、まるで今にも泣き出しそうな顔で私を見下ろしていた事を…彼の胸に顔を埋めていた私は知る由も無かった。
そして、そのまま連れて来られたのは三日月の部屋だった。
御簾の掛かる平安時代を彷彿とさせる部屋の、三日月が寝所としている床から一段高くなっている座敷へと下ろされる。
三日月も腰を下ろし、私を抱き竦めた。
主「皆…心配してくれてたのに、私…何も言えなかった…」
三日月「すまぬ主、今は…口を噤んでくれ…」
主「ぁ……んっ」
突然、三日月は深く…まるで舌や唇を根こそぎ絡め取らんとするかの様な口付けで私の唇を塞ぐ。
混ざり合う唾液が喉奥に流れ込み、飲み下せぬ分が唇の端から零れ落ちる。
口付けだけで、まるで性行を交わしているかの様な卑猥な水音が響く。
主「ンッ…は…ぁ…ッ……ハァ…っ」
三日月「あ…るじ……んっ…ふ……はあ…ッ…」
重なり合う唇、高まっていく熱。
口付けだけなのに、抱かれていた私の身体は力が入らなくなっていた。
出逢った時と同じ、遠征に行った時と同じ…この武装した姿は、三日月をより一層雅に飾り立てていた。