第40章 甘くて苦い
そうだ、俺は君が良い。他の誰でもない…俺を家族と呼んだ、少し変わった主。
そんな君だから、俺は惹かれたんだ。
ふと視線を感じ振り返れば、まだ此方を見ているあの女。
何だと言うんだ、苛立ちが募る。何故こんなに苛立つ必要がある?
ああそうか…好意の無い相手からの想いは、向けられるだけで不快なのか。
主「…ちゃん……鶴ちゃん!」
鶴丸「…君は……っ!!」
主「…んぅ!?」
俺の顔を覗き込んで来る主の顔を見た瞬間、抑えられなくなった。
その柔らかな唇を、自らの唇で無理矢理に塞いでしまった。驚き目を見開くも、抵抗はしない君。
舌を割り入れ、歯をなぞり舌同士を絡ませる。ああ…これが人の口の中なのか、柔らかくて気持ちが良い物なんだな。
ふと視線を向けると、あの店員は泣きそうな顔をして俺達を見ていた。
はは、ざまあみろだな…俺の目には主しか映らない。主しか要らない…!
主「んーっ…んぅっ!!」
燭台切「はい、鶴さん其処まで!」
不意に主から、光坊によって引き剥がされる。
俺はまだ…!
鶴丸「何す…」
燭台切「あれを見て?」
見れば涙を流して顔を真っ赤にし、脱力した様に歌仙に抱き留められている主の姿。
口吸いは俺が考えていたより、遥かに長い時間続けていた様だった。
不味い…やり過ぎてしまったか。