第40章 甘くて苦い
~ * 鶴丸国永 視点 * ~
一体何だと言うんだ?
店に入ってからというもの、ずっとこの女の視線が付き纏っていた。
主が出て行ってしまった。君が居ない場所にこれ以上居る意味など正直、俺には無いのだが…。
鶴丸「……で?支払いを済ませまいのだが」
店員「あ……はい、此れだけになります…」
鶴丸「ん…」
俺は言葉数少なく、早々に支払いを済まし店を出ようと考えた。
支払いを終え、釣りを貰うと店を出ようと背を向けた。
店員「あ、あの!鶴丸…国永さん、ですよね!?私…貴方が好きで、あ、あの!」
鶴丸「…君が好きなのは俺では無く鶴丸国永だ。俺には決めた相手が居る…それ以上聞かせないで貰えるか?正直、不快でしかない」
それは、俺自身も驚く程に冷たい声だった。
今、俺はどんな顔をしているのだろうか?
振り返り店員を捉える俺の目を見ては、怯えた様に目を泳がせる目の前の女に…くだらなくて溜め息が出る。
鶴丸「そういう訳だ。しかし此処の甘味は本当に美味かった、ごちそうさん」
そう言って、次は振り返りもせずに表に出た。
すると、不服そうに声を掛けてくる女人の姿。
主「鶴ちゃんおっそーい」
鶴丸「おう、悪いな主。金、という物を使った事が無かったからな…少し手間取ってしまった」
主「あ、そうだった!ごめんね、払ってから出たら良かったよねっ?」