第37章 可愛いヤキモチは正義
僅かに冷たい風が頬を撫で付け、膝には変わらず小狐丸の体温があった。
空はもう茜色に染まっているだろうか?暗かった筈の瞼の裏が、赤く見える。
小狐丸の寝息と温かさが心地好くて、私もうたた寝をしてしまっていたらしい。
ふと視線を感じ、目を開けると小狐丸が映る。
にっこりと微笑む小狐丸の赤い瞳と、目が合った。
主「おはよう…かな?もう夕方だけど…」
小狐丸「本当に…。ですが、一番にぬし様からおはようと言って頂けるとは…こんな贅沢な目覚めは他にありませんね」
小狐丸はおだて上手なのかも知れない。そんな事を言われては、舞い上がってしまう。
可愛いけれど言うと同時に細められた瞳は…何処か艶めいていて、やはり大人の男性なのだと実感する。
主「でもほら小狐丸、そろそろご飯だよ?」
小狐丸「そうですね…ですがもう暫し、こうしてぬし様を感じていたい。けれど其れでは…皆に咎められてしまうでしょうね」
擦り寄る様に腰に抱き付き、私の腹に顔を埋めて来る。
甘えん坊な大きい子供みたい…可愛い。
そんな小狐丸の髪を、優しく撫でる。
小狐丸「…ふう、いけませんね。どうしても…離したくなくなってしまう」
主「うーん。でもねぇ…私のお腹が騒ぎ出す前にご飯食べに行かないと、五月蝿い思いするのは小狐丸なんだぞ~?」
冗談染みて言ったつもりだった…。