第36章 狐の婿入り
小狐丸「ぬし様…この小狐が、温めて差し上げます…っ」
主「へ?…きゃっ!?」
そう言うと、小狐丸は私を抱き上げ審神者部屋を出た。
え、ちょっと待って!?
温めるってそもそもどうやって?普通に手をぎゅってして、ハァーッて息で温めるとかじゃないの?
聞こうに聞けず、私は小狐丸の部屋へと連れて来られた。
小狐丸が青畳敷きの御簾の掛かった部屋に入り、優しく床に下ろしてくれた。
見回すと、三日月の部屋にそっくりだった。
主「此処…小狐丸のお部屋?」
小狐丸「ええ。ぬし様に頂いた部屋を、三日月殿と共に使わせて頂いております」
ニコニコと明るい笑顔の小狐丸。
良かった…うん、如何わしい温め方では無いらしい。
そう思った次の瞬間…小狐丸と唇が重なった。
主「んぅ…っ!?」
小狐丸「ん…っ…ハァ…ぬし様…っ」
それはあの若月の夜の、噛み付く様な口付け。
唇を割り、差し込まれた小狐丸の舌が口内を犯すかの様に蠢く。
それはまるで小狐丸では無い別の生き物の様で、熱い舌の温度が私の舌を焼き付くそうとしているかの様だった。
小狐丸の尖った歯が、私の舌を軽く噛んだり優しく擦る様に擽ったりを繰り返し、脳が蕩けてしまいそうな程の甘い痺れが走る。
主「…んっ…は…ぁ…こぎ…つね…ま…るぅ…っ!」
小狐丸「まだ…まだ…足り…ません!ぬし様の唇に…この…ン……小狐を…っ」
何を言い掛けたのだろう?
ボーッとぼやけ始める思考が理解出来ずに、ただこの吸い付くされんとする口付けを受け入れる事しか出来ない。
この重なった熱が心地好くて、溺れてしまいそうになる。