第36章 狐の婿入り
さて…皆、出て行ってしまった。
今日は早々に仕事を済ませておこう…と、私はパソコンを開いて報告書を纏め出した。
暫くの時間が経った。
どれ位の時間が経っただろう?五人が新たにやって来た事で、まだまだ時間が掛かりそうな長い報告書になった。
溜め息を吐き、パソコンのキーボードを打つ。
漸く一段落し、パソコンの電源を落としたその時…。
?「ぬし様、私は誰でしょうか?」
不意に暗くなった視界。
温かく包まれる目元に、すぐに誰かが手で目隠しをしたのだと気付いた。
誰だ、こんな可愛い事をするのは…?
いや、この話し方と声はきっと…?
主「小狐丸っ」
小狐丸「ふふ、判ってしまわれましたか…正解です」
ぱっと手を離したかと思えば、後ろから包み込む様に抱き締められた。
幾ら可愛いとはいえ、私とはかなり体格差のある大きな男性。
服越しとはいえ、密着するだけで頬に熱が集まってくる。
主「ど…どうしたの?」
小狐丸「先程、包丁にやられてしまいまして。ぬし様に…どうしてもやりたくなってしまいました」
可愛過ぎかよ!?
もう…小動物的に可愛いな、小狐丸!
首元を覆う様に回された小狐丸の腕に、手を重ねる。
小狐丸「…冷たい」
主「ぁ…ごめんっ」
パソコン操作をしていた所為だろう、私の手は気付かない内に冷えていたらしい。
冷たいと呟いた小狐丸の声に、私は慌てて手を引っ込めた。