第34章 戸惑う恋心
熱を冷ます様に頬を手で扇ぎながら歩いていると、急に目の前に現れた壁。
次はぶつかりはしなかったが予想外の展開に目を大きく見開き、素っ頓狂な声が漏れた。
主「うぇ!?」
太郎「ん…?どうかしましたか、主様?」
あ…あー…太郎太刀か。
身長差に加えて彼の広い肩幅、体つきが相俟って…壁かと。
いやあ…ごめん、太郎太刀。
主「い、いやあ…急だったから驚いちゃって」
太郎「ああ…これは、申し訳ありませんでした」
ぺこり、と頭を下げる太郎太刀。
私は慌てて太郎太刀の肩を押して、下げた頭を上げさせる。
主「え…いやいやいや、私がちゃんと見てなかったのが悪いんだし!」
いやまあ、今回はちゃんと見てはいたんだけど…。
太郎「主様は優しいのですね」
主「そんな事無いよ?私だって、怒る時は怒ります。がおーっ…なんて?」
爪を立てる肉食獣の様に指を曲げておどけて見せた。
太郎「………」
主「ん、何かあるの…?」
ふと、表を見詰める太郎太刀。
不思議に思い彼と同じ方向を見詰め、再び彼へと顔を向けると…。
太郎「…引っ掛かりましたね?」
その顔はもう目前まで迫って来ていて、優しく触れるだけの口付けが唇へと落とされた。
漸く冷めた筈の頬の熱が、再び再燃して耳までをも赤く染めた。
主「な……太郎!?」
太郎「しー…お静かに。騒いでは、私が主様を独り占め出来る時間が減ってしまいます…」