第33章 仲直り
せっかく、蛍丸が背中を押してくれたんだ。
私は勢いのままに、三日月の部屋へと駆けて行った。
三日月の部屋は、こんな部屋があったのか…と思う程、平安時代の様な装いが為されていた。
御簾が掛かった寝所が二つ、きっと誰か同室の人が居るんだろう。
一面に広がる庭園の景色を前に、三日月は外を眺める様に此方に背を向けていた。
主「三日月…!」
三日月「……おや、主か。どうかしたか?」
いつもと変わらない雰囲気を醸し出しているものの、何処かいつもの余裕が感じられなかった。
此方に背を向けたままで、見る事もせずに返事をする三日月。
私はゆっくりと歩み寄り正座すると、その広い背中に抱き付いた。
主「…ばか」
三日月「はっは…そうだな」
主「三日月のばーかばーか」
三日月「……っ」
一瞬、僅かに肩がぴくりと跳ねた様な気がした。
私はそのまま抱き付いた三日月の背に顔を埋め、呟いた。
主「………好き」
再び、三日月の肩がぴくりと僅かに跳ねる。
主「嫌いじゃないよ…嫌いになんてなれる訳無いでしょ?でなきゃ、あんな事しない」
三日月「……」
何も言わない三日月。
不安になり見上げて見ると、眉を下げ余裕の無い三日月の端正な顔が此方を向いていた。