• テキストサイズ

薬屋の譫言

第4章 名探偵誕生


二話 二人の妃①

〈あーあ、やっぱりそうなんだ〉
〈ええ、お医者様が入っていったのを見たって〉

義姉である大猫の隣で一緒に汁物をすすりながら耳を傾ける
食堂での食事の時間もまた大猫と会える嬉しい時間なのだ
斜め前に座っている下女たちが噂話をしながらも気の毒そうな表情をしている

〈玉葉様のところにも、梨花様のところにも〉
〈うわー、二人ともなんだ。まだ、半年と三か月だっけ?〉
〈そうそう、やっぱり呪いなのかしらね〉

出てきた名前は、皇帝のお気に入りと言われる妃たちで、半年と三か月というのはそれぞれが産んだ宮の年齢のことだろう

「ん?どうした?」

話を聞いて気になった為、大猫の袖を引っ張り耳打ちをする

『…毒?』
「いや…三人のうち二人は公主だからそれは違う」
『そっか…でも呪いじゃない、よね』
「そうだな」
『どんな風に亡くなられたんだろね』

小声での会話だったにも関わらず、おしゃべりな下女たちにも聞こえていたらしい
聞いてもいないのに色々教えてくれた上に事あるごとに噂話を教えてくれた
彼女の名は小蘭というらしい

〈詳しくは知らないけど、皆、だんだん弱っていったんだってー〉
〈お医者様の訪問回数から、梨花様のほうが重いのかしら?〉
『梨花様ご自身も…?』
〈ええ、母子ともによ。流石に詳しい症状はわからないけど、頭痛とか腹痛とか、吐き気もあるっていうけど〉

梨花様の御子は東宮であり、玉葉様の御子は公主…陛下の寵愛の重さは別にしても、子に性差があればどちらに重きを置くかと言われたら東宮だろう
病の重さよりも医官が多く訪問するのはそういう理由な気がする
知っている事を話すと満足した小蘭は次の仕事へと向かったため、私も次へ向かおうと後片付けをする

(気になる…)
たまたま一緒の仕事だった大猫に視線を送ると、大猫も同じだったようで微かだが眉間に皺を寄せていた
後宮と一括に言ってもその規模は広大で、そこらの町よりもずっと広いため、基本的に持ち場である東側を出る必要はなく、用事を言いつけられたトキぐらいしか離れる暇はない
((用事がなければ作ればいいだけ))
義姉妹の気持ちは一致したのだった
/ 24ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp